行知学園日本語教師養成講座

高嶋幸太さんにインタビュー!日本語教師の可能性を広げる突破口になりたい

更新日:2025/10/06

  • facebook
高嶋幸太さん

高嶋幸太さん
登録日本語教員。埼玉県生まれ。東京学芸大学教育学部日本語教育専攻卒業。英国グリニッジ大学大学院言語教育学専攻修士課程修了。大学卒業時に日本語教師の資格を取得し、日本語教育能力検定試験にも合格。都内の日本語学校での勤務を経て、JICA海外協力隊としてモンゴル派遣される。大学院修了後は、立教大学や早稲田大学に非常勤講師として勤務。現在は、大学勤務のかたわら企業研修や日本語教師養成講座の講師を担っているほか、著書の出版も手がけている。
公式ホームページ:「世界の日本語図書室」


\講座を比較して選ぼう!/
無料!
日本語教師の講座の資料請求

日本語教師になるまで

インタビューに答える高嶋幸太さん

日本語教師を志したのは、大学受験前

私は中学生の頃から、学校の先生になりたいと思っていました。語学も好きでしたが、理系だったので当初は数学教師を目指していたんです。それがあるとき、日本語教育に関するムック本で日本語教師という職業を知って……。日本語を使いながら海外の人と接することができる仕事に大きな魅力を感じ、一気に惹き込まれていきました。

具体的な夢ができたことで文転を決意し、専門の資格が取れる大学を受験することにしました。受験まで1年を切っているタイミングでの方向転換です。理系科目でも受験できる大学を優先的に選んで受験した結果、合格したのが東京学芸大学教育学部日本語教育専攻でした。

同級生で初志貫徹したのは、自分一人だった

大学では20人程いた同級生と同じ夢に向かいながら、共に日本語教育の学びを深めていきました。教職課程も履修し、国語の中学校・高等学校教諭一種免許状や司書教諭の資格も取得しました。

大学1・2年生の夏休みには3週間程、オーストラリアに滞在。現地の学校でアシスタントティーチャーのような役割を担いながら、日本語教師の仕事の魅力を肌で感じました。自分に向いている職業だと感じ、夢へのモチベーションがさらに高まりましたね。

一方で、周囲からは日本語教師では食べていけないのではないかと言われることもあり、葛藤を抱えていました。同級生たちも別の進路に進み、卒業後に日本語教師として働き始めたのは私だけ。不安がなかったと言えば嘘になりますが、「自分のやりたいことを優先しよう」「お金は後からついてくるだろう」と信じて歩みを進めました。

モンゴル、そしてイギリスへ

24歳で単身モンゴルへ

大学卒業後は都内の日本語学校で半年間、非常勤講師として働きました。週16コマ程の授業をこなす中で、「もっと自分の教授経験の幅を広げたい」と思うようになったんです。海外でも教えてみたいと思い、2年間腰を据えて働ける、青年海外協力隊(現在はJICA海外協力隊)に応募。モンゴル派遣が内定しました。

当時は大学卒業から半年程しか経っていませんでした。日本語教師としての実務経験を補うように、日本語教授法や教育実習の技術補完研修を6週間受け、さらには福島県二本松市の訓練所で2か月間モンゴル語の語学訓練を受けました。無事に最終試験に合格し、晴れてモンゴルに派遣されたのが2010年3月のことです。

言葉が通じない難しさと、楽しく学んでもらう工夫

首都ウランバートル市の教育局(日本でいう東京都の教育委員会にあたる機関)に配属された私は、日本語ネイティブの先生がいない現地の小中高一貫校、3校を担当しました。曜日で分けて各校を巡回しながら、下は小学2年生から上は高校3年生まで、外国語の授業や受験対策として日本語を教えていました。

日本国内で日本語を教えるときは、実際の生活や仕事、勉学などで役立つ日本語が身につくように、日常生活に根差した授業をします。モンゴルでは学習者の年齢が低かったこともあり、とにかく日本語を楽しんでもらうこと、日本語クラスで学ぶ時間がワクワクするような時間にすることを念頭に、授業を作りました。

ゲームや歌を取り入れたり、ひらがなを学ぶにしても文字を分解してパズルにしてみたり…。日本国内では思いもつかなかった授業がいくつもできました。「来年も日本語クラスを受けたい」というモチベーションにつながる授業づくりを心がけていました。

理論と実践を繰り返した留学生活

2年間の派遣期間を終えてモンゴルから帰国したときに、改めて学び直しが必要だと感じました。学士だけでは大学で教鞭をとることもできないですし、先々を見据えたときには修士号が必要だと思ったんです。

進学先に選んだのが、イギリスのグリニッジ大学大学院。外国語教授法は英語が最も進歩していたことや、いろいろな国から集まる教師たちと肩を並べて学ぶことで良い刺激が受けられるのでは、と期待できたことが決め手です。イギリスは1年強で修士号が取れるのも魅力的でした。

外国語教授法や言語習得論などの大学院での学びはもちろんのこと、当初の期待以上に仲間たちからの学びも多かったです。イギリスの英語教師からは英語教育のライティングで使う教材をシェアしてもらい、日本帰国後の教材づくりの参考にしました。

イギリスの学生ビザは、学期中も週20時間までの労働が認められています。私はパートタイムティーチャーとして、ロンドンの語学学校で現地に住むイギリス人やフランス人、インド人といった多国籍の方々に日本語を教えていました。大学院でのインプットを語学学校でアウトプットすることで、理論と実践の結びつけができ、学びを一層深められたと思います。

インタビューに答える高嶋幸太さん

大学で教鞭をとりながら自著を初出版!

イギリスでの学びを活かした授業づくり

帰国後は、2014年から立教大学と早稲田大学で非常勤の日本語教師として留学生を対象に授業をしています。ひらがなや挨拶から始まる入門から、日本のニュースや新聞記事を見てディスカッションをする上級まで、学習者のレベルはさまざまです。

イギリスでの学びを大いに活かしながら、これまで10年以上教鞭をとってきました。自分自身が海外で留学生として学んだ経験を踏まえて、時には、慣れない日本での生活に戸惑う留学生にアドバイスをすることもあります。

また、あるとき、大学で受けもったクラスにいたモンゴルからの留学生から、「先生、私のことを覚えていますか?先生は、私の学校に来ていました」と言われたんです。これには本当に驚きました。自分が教えた学生が日本語の勉強を10年以上続け、日本に留学するまでになったことにとても感動しました。教師冥利につきますね。

誰かの人生に大きな影響を与えることを目の当たりにし、日本語教師の仕事の魅力を改めて感じた一件です。

本を作って広がった世界

モンゴルで教えていたときにふと、モンゴルの学習者にはその人たちに合った教え方があるのでは、と思いました。つまり、同じ日本語を教えるにしても、学ぶ側の母語によって、アプローチ方法を変えた方が分かりやすいのではと思ったんです。

そこで、JICAの同期に協力をお願いしながら、英語・スペイン語・ベトナム語・中国語・モンゴル語の5言語の特性を踏まえた指導法を盛り込んだ本を企画し、サンプル原稿と共に出版社に持ち込みました。そうしてできあがった初めての本が、国際語学社から商業出版された、『その日本語、どこがおかしい? 日本語教師のための文型指導法ガイド(高嶋幸太 編著、関かおる 監修』(※)です。

この1冊が世に出てから、私の世界はずいぶんと広がりました。他の出版社の方から連載のお声がけをいただいたり、新たな本の執筆を依頼されたり……。日本語教師養成講座の講師のオファーも、最初の本がきっかけでした。

2025年9月現在までに単著と共著合わせて10冊、分担執筆も含めると11冊の本を作りました。これまでは日本語教師として書いた専門書がメイン(11冊中10冊が専門書)でしたが、来年出版予定の12冊目は、日本語のおもしろさや奥深さを広く一般の読者に伝える本です。本作りは決して簡単なものではないですが、本を通した仕事の広がりにやりがいを感じています。

※本書の増補改訂新装版として、2018年に『日本語文法を教えるためのポイント30(大修館書店)』、2022年に『日本語文法を教えるためのポイント30 中上級編(大修館書店)』を出版

日本語教師を目指す方へ

インタビューに答える高嶋幸太さん

誠実であり続けること

23歳で日本語教師の世界に飛び込んでから今まで、ずっと大切にしているのが「誠実であり続けること」です。誠実であれば、ちゃんと見てくれる人はいますし、いろいろなかたちで仕事が続いていくということを、経験を通して何度も学びました。日本語教師の仕事から広がった出版も、講師業も、どこかで仕事をないがしろにしていたら実現していなかったと思います。

当然、日本語学習者にもいろいろなタイプの人がいます。例えば、過去に、リスニングをとにかく嫌う方がいました。でも、クラス全員でリスニングをした後で、同じテーマでディスカッションを促すと、その方も楽しそうに関わっていたんです。クラス全体を見渡しながら、誰か一人に肩入れをしたりせず、一方で誰か一人が取り残されたりすることもないよう、誠実に向き合うことが大切だと思っています。

自分が一番楽しむ!

大学を卒業するときは周りから心配されながら日本語教師の道に進んだ私ですが、改めて振り返ってみて、この道に進んだことを少しも後悔していません。自分の好きなことを仕事にできているのが何より大きいですし、それで生活ができているなんて、こんなに幸せなことはないですね。

日本語教師の仕事はとても奥が深いですし、今は動画やブログ、オンライン講師など、資格の活かし方もさまざまです。何か一つでも、自分に合いそうなものを深めると、それがフックになって仕事の幅が広がると思います。

これから日本語教師を目指す方にはぜひ楽しみながら仕事をしてほしいです。楽しい感情は、学習者や同僚といった周りの人たちにも伝播します。精一杯楽しみながら仕事をすることこそ、この業界で長く続けていくポイントかもしれません。

今後取り組みたいこと

日本語教師の活動の幅を広げたい

高嶋幸太さん

来年出版予定の本にも関わってきますが、日本語教育とは関係のない場で日本語やコミュニケーションのおもしろさを伝えていきたいです。「言葉ってこんなにおもしろい」「コミュニケーションってこんなに奥深い」ということを多くの人に知ってもらいたいですね。

日本語を軸にしながら、日本側と、海外から日本に来る人や海外で日本語を学ぶ人たちの橋渡しができるのは、日本語教師という仕事の強みです。今後は日本語教育の中だけでなく、社会全体が理解し合えるための発信もしていけたらと思っています。

日本語教師は日本語を体系的に学ぶので、日本語を母語とする人たち向けに教えることも可能です。例えば、企業研修で敬語やマナー、ビジネス文書の作り方を教えるというように、活動の幅はもっと広げられると思っています。私が突破口となるような実例をたくさん作って、これまでの「日本語教師は稼げない」というイメージを取り払っていきたいですね。

\講座を比較して選ぼう!/
無料!
日本語教師の講座の資料請求

日本語教師の講座選びなら
BrushUP学び

BrushUP学び 日本語教師を学ぼう
BrushUP学び

BrushUP学びは日本語教師養成講座や日本語教育能力検定試験の対策講座など、日本語教師を目指せるスクールの情報をまとめたサイトです。エリア別にまとめて比較でき、とても見やすいです。

日本語教師の資料請求はこちらから